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「首の女」殺人事件
昭和61年8月 徳間書店(トクマ・ノベルズ 刊行  浅見光彦シリーズ 第10作
ストーリー
主要登場人物
≪ストーリー≫
・プロローグ
男は乗るはずだった列車には乗らず駅を出た。駅前の公衆電話で短い通話をして人気の無い集落を抜けて海に出た。
一時間ぐらい防波堤にいた。そこに黒い乗用車がやって来て男はその車に乗ってどこかへ去っていった。
・蝉の男
真杉伸子は滝野川小学校の同窓会でセンチュリーホテルに来ていた。
『野沢さん』と旧姓を呼ぶ男の声がした。この男は宮田治夫といって以前、伸子が振った男であった。
同窓会までには時間があったので二人はティールームに行き話しをした。その中で宮田がまだ独身だと判ったので伸子は妹の光子を紹介すると宮田に言ってホテルの公衆電話から自宅にいる光子に電話をした。その時、隣で電話をしている四十位の紳士が『マジでか』と今風の言葉を使ったのにビックリした。
伸子は先に同窓会の会場に行くことにした。エスカレーターに乗ろうとした時に何気なく自分のいた席を見たらさっきの電話の紳士が宮田と話し込んでいた。
野沢光子は浅見家に家庭教師として行くとは思ってもいなかった。そして、これは運命としか言えないと思った。
光子は能楽師の家柄である鳴海家の婦人から浅見陽一郎の娘の家庭教師に紹介されていたのだった。光子と光彦は小・中学校の同級生だった。
光子と宮田は銀座二丁目に美術館に来ていた。
順路の終わり近くにある木彫りの“蝉”の前で五十代ぐらいの男がじっと“蝉”を見ていたが突然『違う』と言って足早に立ち去った。
順路の最後に“女の首”と言うブロンズ像があり、それを見た光子は姉の伸子に似ていると思いその事を宮田に言った。
翌日、伸子が光子のところにやって来て宮田との昨日の事を聞いたが光子はその気ないとの事だった。
数日後、光子が朝食を食べながら新聞を読んでいると福島県の“岳温泉”で変死体が見つかったという記事が目に入った。そこに載っている男の写真は美術館で“蝉”をじっと見ていた男だった。男は“富沢”という名で広島県の人間だと書いてあった。
光子は慌てて宮田に会いに行きその事を伝えたが、そんな記事は見ていないし感心もないとの事だった。
・江川殺人事件
島根県江津市の“江川”にかかる江津大橋の付近で男性の死体が浮いているのが発見された。警察の調べで、この男性は宮田治夫である事が判明した。
光子はこの件を伸子からの電話で知った。
宮田が死んでから2週間後、光子が家庭教師に出掛けようとしたところに島根から二人の刑事が訪ねて来た。刑事は宮田との関係とアリバイを確認しに来たのだった。
刑事がアリバイを聞きたい日は丁度、浅見家の家庭教師の日だったので浅見家の場所を教え、そこで確認してくれるように言った。
刑事は浅見家に行き光彦から当日は確かに家庭教師に来ていたという証言を得た。また、その時に光彦が“津和野殺人事件”の時の浅見光彦だと判り捜査協力をお願いされた。
刑事が帰った後、光子がやって来た。光子は美術館の話しや福島での変死事件の話しをしたら光彦は興味を持ったらしく福島に行ってみると言った。
光彦は福島に行く前に宮田の劇団“轍”を訪れ風間という劇団員から話しを聞いたがこれといって何も出てこなかった。
・光太郎の根付
真杉家に妙な電話がかかり始めて一週間が経った。
いつもはベルが鳴って出ると『真杉さん?』『はい、そうです』の会話だけで切れてしまうが今日は『宮田から預かった物を渡してほしい』との事だったが伸子には何の事だか全く判らなかった。
伸子は同窓会の時に宮田と話し込んでいた同級生の駒田勇の事を思い出し駒田に電話したところ、あの時に話し込んでいたのは光太郎の根付の話しだったとの事。また、宮田からは何も預かっていないとの事だった。
光彦は福島県の岳温泉に向かった。
所轄の二本松署に行き谷山という警部補から話しを聞いた。亡くなったのは広島県広島市南区大洲に住む著述業の富沢宏行・49歳との事。警察の調べで富沢は根付の研究で福島に来たのではないかという事だった。
また、谷山に紹介された土地の長老に話しを聞いている時、以前にも高村光太郎の事を訊いて廻っていた人物がいて、その人物は光太郎の根付を持っている家を探していたようだという事を知った。
そして、その人物が光彦の持っていた写真から宮田である事が判った。
光彦が東京に戻ると光子から電話があり、宮田は福島に出掛ける一週間前に高村光太郎の根付の事を調べていたらしい事、同級生に根付職人がいて宮田が色々聞いていた事などを光彦に報告した。
また、姉・伸子が用があるので電話してほしいとも言われた。伸子に電話してみると電話では話し辛いので明日会ってほしいと言われ会う約束をした。
光彦と会った伸子は妙な電話の事を話した。
また、光彦に駒田の住所と電話番号を教えた。
・鳴き砂の町
千葉県柏市にある駒田に家に行った。駒田の家は四代続いた根付師の家系であった。
駒田の話しの中で島根県は昔、根付の産地として有名だった事を聞いた。そして、その代表的な作品に“蝉”の根付があった。この事は宮田にも話していたので、それで島根に行ったのではないかと駒田は言った。
伸子は光彦の助言で怪電話の人間と会う事にして新宿中央公園で待ち合わせる事にした。
光彦も公園が一望できる場所に車を止め、望遠レンズを付けたカメラをセットし自分は双眼鏡で監視していた。そこへ若い男が現れ伸子と話しをしている。その男はどうやら胸にマイクを仕込んでいるらしかったので周りを注意深く見てみると百メートルぐらい離れた木陰にヘッドホンを付けた中年男を発見した。光彦は写真を撮った。
その後、伸子は光彦は落ち合い男との話しの内容を話した。話しの内容は
1.宮田から預かり物を受け取ったか
2.受け取った物は何か
3.いつ、どこで、どういう理由で受け取ったか
4.おって連絡する
というような事だった。
また、光彦は大至急現像してくれるように頼んだ中年男の写真を見せたところ、同窓会の時にティールームで宮田と話し込んでいた男だと言った。
光彦は島根県の宮田が殺された事件の捜査本部がある江津署を訪れた。
江津署には県警本部から井出警部が来ていた。井出と部下の秋本の案内で現場を見に行った。また、井出の話しでは仁摩町というところで宮田らしき人物を見掛けたという情報があったのだが、あまりにも現場から離れているので別人ではないかと考えられていた。
しかし、目撃された地名が仁摩町の馬路(マジ)海岸だと聞いて行ってみる事にした。
また、光彦は郷土の歴史に詳しい人に話しが聞きたく、秋本に聞いたところ恩師の竹島という人を紹介された。
光彦は竹島に会い根付の事を聞いた。それと、根付の売買を斡旋している牧原という人物を紹介してもらった。
・送られた首
光彦は牧原の家に行き話しを聞いた。牧原は福島で殺されたと富沢と知り合いである事が判った。また、昔大庄屋だった大沢という人物とも関係があった。
大沢は今の代になって財産を食いつぶし美術品や骨董品などを売り払って遊び回っているらしい。
大沢家の先代には男の子供がなく、現当主の啓次は長女に婿だという。また、次女は東京にいてK大学文学部助教授の柴山亮吾という人物と結婚したとの事。
光彦は突然閃いた。伸子の夫の民秋もK大学文学部助教授ではないか・・・伸子に電話して、K大学の柴山助教授の写真を探してほしい。そして、その人物は怪電話の男かどうか確認してほしいと頼んだ。
しかし、写真はどれも小さなものばかりではっきりとは判らなかった。
写真をしまうついでに掃除をしようと書斎に入ってふと上を見上げると天袋から紙紐が少し出ているのを発見した。それを下に下ろし包み直そうとして伸子はギョっとした。その包みは宅配便で送られて来ていて、宛名が“真杉伸子”、送り主が“宮田治夫”になっていた。伸子はその包みを開けてまたビックリした。中には伸子そっくりの“木彫りの女の首”が入っていたのである。
伸子は、もしかしたら夫はこれを見て宮田を殺したのではないかと不安になった。
光彦は東京に帰る事にして馬路海岸を通った時、前に話しを聞いた老人から木彫り職人がこの近くにいると聞いてその人物に会う事にした。その人物は久永松男という男だった。
久永のところに行き話しを聞いたが、大沢からの依頼で根付を作っていることは判ったが、他には何も収穫はなかった。
・ギャンブル
伸子は自分に送られて来た“木彫りの女の首”の事があり、夫が犯人ではないかと思い込み、誰にも内緒に事件を終わらせようとした。そして、光彦にも内緒に怪電話の男と会い“木彫りの女の首”を処分しようと考えていた。
そんな事があったとは知らない光彦は伸子が自分を遠ざけているようなので、何か伸子に失礼な事を言ったのではないかと悩み光子に相談した。
光子は伸子のところに行き何とか“木彫りの女の首”の事を聞き出し、それを光彦に伝えた。光彦は宮田が死んだ日と“木彫りの女の首”が発送された日が同じことに気が付き、伸子の夫が宮田を殺す事は時間的に不可能だから安心するよいうに言った。また、“木彫りの女の首”がどこから送られてきたかを聞いたところ宅配会社の“馬路営業所”と判った。
光彦は真杉家を訪ね真杉夫妻・光子と4人で話しをして、今回の事件は“木彫りの女の首”が見つかった事で全て解明できたと言った。
光彦は再び島根に飛び木彫り職人の久松に会い、駒田に頼んで作ってもらった“蝉の根付”を東京で行われた国際的オークションに出品された物と偽って“蝉の根付”の写真を見せた。また、“蝉の根付”写真の中に“木彫りの女の首”の写真も一枚混ぜて入れていた。“木彫りの女の首”の写真を見た時の久永は驚きの叫びを発した。
また、この出品者が“ある人”であることも光彦は言った。
光彦は江津署の捜査本部に井出警部を訪ね、久永を見張ってほしいと頼んだ。刑事が久永を見張っているとボストンバッグを持ってどこかに旅行に出掛けるらしいと連絡が入った。
・対決
久永は東京に着いた時、突然光彦から声を掛けられた。『“ある人”の家に行くのですか』という問いに『そうです』と答えると土産を持って行ってほしいと頼まれ紙袋を渡された。仕方なく渡された紙袋を持って“ある人”の家に向かった。
久松は“ある人”の家に着くと、“ある人”に“木彫りの女の首”を返してほしいと言った。
“ある人”との話しは進展がなくイラだった久永はノミを手に“ある人”に迫った。“ある人”は近くにあったゴルフクラブを手に反撃をした。
その時、刑事達が入って来た。光彦が久松に頼んだ土産の中にマイクが仕込んであり、二人の会話を聞いていたのであった。
・エピローグ
光彦は安達太良山を見たいという光子を愛車ソアラに乗せて東北自動車道を北に向かっていた。
光子は、光彦に言った・・・・・・・・・・
≪主要登場人物≫
・野沢光子
33歳
東京都北区西ヶ原在住
家庭教師と翻訳の仕事を少々
本作品のヒロイン的存在
・真杉伸子
38歳
東京都杉並区荻窪在住
野沢光子の姉
・真杉民秋
東京都杉並区荻窪在住
K大学文学部助教授
真杉伸子の夫
・宮田治夫
38歳
東京都北区西ヶ原在住
劇団“轍”プロデューサー・脚本家<
真杉伸子の同級生
・富沢宏行
49歳
広島県広島市南区大洲在住
著述業
・柴山亮吾
東京都杉並区浜田山在住
K大学文学部助教授
・久永松男
島根県邇摩郡仁摩町在住 (刊行時の住所、現在は太田市)
木彫り職人
・大沢啓次
島根県江津市在住
旧大庄屋で町の名士
・井出
島根県警捜査一課 警部
・橋田幸夫
島根県警捜査一課 巡査部長